「フォートナイト」「Unreal Engine4」」でゲーム業界になくてはならない存在となったEpicGames社。今回はその日本支社代表である河崎高之氏へのインタビューの機会を頂く事が出来た。
インタビュー前半では主に「Unreal Engine」に関するお話をしていただいたが、後半(本記事)では2017-18年を振り返っての印象深かった出来事や、話題に上がる機会の増えた「eスポーツ」に関する持論などを語って頂いた。
▶︎インタビュー前半:ゲーム業界を夢見る人必見!EpicGamesJapan代表・河崎高之氏に聞くアンリアルエンジンのこと
2017-18年を振り返って
Swicth・フォートナイトで激動の年
筆者
Unreal Engineのお話からガラッと変わるのですが、河崎さん個人・EpicGamesとして2017-18年上半期を振り返って印象的な出来事などは?ゲーム業界に限らずでもOKです(笑)
河崎氏
ゲーム業界に限らなくてもいいんですか?(笑)
ゲーム業界の話でいくと、我々EpicGamesはフォートナイトの大ヒットでガラッと状況が変わりましたね。Japanに関しても今年3月の日本版ローンチで結構変わり、EGJの主要な活動の一つに「フォートナイトのパブリッシング」が増えました。
© 2018, Epic Games, Inc.
筆者
フォートナイト以外の部分ではいかがでしょう?
河崎氏
去年のことですが、Switchの予想以上の売れ行きや、「モンスターハンター ワールド」が国内でほぼ200万本売れたことは印象深いですね。
©CAPCOM CO., LTD. 2018 ALL RIGHTS RESERVED.
コンソール(家庭用ゲーム)に未来はない、みたいな悲観論も一時期はあったんですけど、去年「ドラクエXI」がPS4でも100万本、モンハンがダブルミリオンを超えたことで、そういった論調はかなり変わったんじゃないかなと。
コンソールで国内100万本を超えるタイトルは出ないんじゃないかっていう説も割と業界の中にはあったんですけど、ここ2年でかなりコンソールが復権してきたかなという印象はありますね。
最近のeスポーツについて
日本におけるeスポーツのあり方
筆者
2018年の話でいくと、2月に日本eスポーツ財団が設立されて、国内のeスポーツ事業が活性化しようしていますよね。
© JeSU 2018 All rights reserved.
河崎さんは今の日本のeスポーツにはどんなイメージを持たれていますか?辛口でも大丈夫です(笑)
河崎氏
辛口でもいいんですね(笑)
うーん、どの立場でお話するのがいいですかね・・・。
バズワードとか流行り言葉的に「eスポーツ」とか「プロゲーマー」が用いられるようになって、テレビのニュースとかいろんなメディアで取り上げられるようになってきたので、ゲーム業界にとってみると注目が集まっていいことなのかなと思いますね。
一方で「eスポーツ」という言い方がすごく誤解を呼んでいるかなという印象もありますね。
筆者
誤解というと?
河崎氏
日本で行われているeスポーツイベントなどでは”スポーツ”という面が強く出ているんですが、個人的にはそういった部分に少し違うかなと思っています。
本当のスポーツ、例えば野球とかサッカーって、自分ではやっていない人であってもある程度楽しめますよね。ラグビーでも、ルールとか知らなくても五郎丸選手が流行ったから世間で賑わってたじゃないですか。そういうのが「スポーツ」だと思うんですよね。
「eスポーツ」ってそうじゃなくて、例えば「リーグオブレジェンド」をやったことない人はどんなに盛り上がっていても「リーグオブレジェンド」のeスポーツは見ないですし、「ストリートファイター」もやったことない人は見てもなかなか楽しめないですし。
© 2017 Riot Games, Inc. All rights reserved. Riot Games, League of Legends and PvP.net are trademarks, services marks, or registered trademarks of Riot Games, Inc.
そこに無理やり集客するためにタレントやアイドルを呼んできたりしてるんですけど、あれって一時的な劇薬になりはしても、それでファンが根付くことはないと思うんですよね。
「eスポーツ」っていう言葉に囚われて、無理やりスポーツと同じようにしようとしているのはちょっと違うかなと思いますね。これはeスポーツって言葉が使われ始めた時から個人的には思っていることですね。
eスポーツとはどうあるべきなのか
筆者
それでは河崎さんから見てeスポーツというのはどうあるべきだと思われますか?
河崎氏
「eスポーツ」ってどういう風にするべきかって言うと、囲碁とか将棋とかに近いと思うんですよね。
囲碁とか将棋って、ルールを知っていて自分で囲碁・将棋をするからテレビ中継や新聞の欄を見たりすると思うんですよ。
わかる人がそれなりの数いて、大会があって、その中で強い人がプロとしていて、そしてプロ同士の対局を楽しめる人がいるからエコシステムとして成り立っていると思うんですよね。
そのエコシステム作りのために大事なのはライトなファンを広げていくことなんですが、将棋みたいに子供将棋大会をやったり、プロとの指導対局をやったり、「どうぶつしょうぎ」などで広めたり、
あとは藤井聡太さんみたいなスターが出てきたりっていう、きっかけづくり・ファンベース部分をすっ飛ばして、プロだけ作って「かっこいい」みたいにしても、eスポーツは広まらないと思います。
筆者
日本のeスポーツ業界は世界規模で見るとまだまだ発展途上というのもよく言われる話ですが。
河崎氏
アメリカなんかは日本と形態自体は変わらないですよ。
ラスベガスなんかからプロモーターが入ってきて、賞金を出してイベントとして無理やり盛り上げているので、文脈としては「スポーツ」というカテゴリから脱してはいないかなと。
引用元:Evo 2017 Experience Giveaway!
サステイナブルなエコシステムとしては成り立っていなくて、むしろユーザー不在・ゲーマー不在といった状況に関しては日本以上に大きな問題となっている印象もありますね。
だから海外と比べて日本の現状をそこまで悲観的に見ることもないと思いますね。むしろ悪い方に突っ走っていない分まだ修正しやすいんじゃないかな。
筆者
ということは今後の課題は、やはりどれだけライトユーザーを取り込んでいけるかといった所にあるわけですね
河崎氏
そうですね。
その素晴らしいサンプルになりかけていたのが平昌オリンピックの時のカーリングですかね。
あの時って、カーリング女子代表のキャラクター性っていうのもあったと思うんですけど、ワイドショーとかでホワイトボードとか使って「今こうだからこうなんです」っていう解説をしていたじゃないですか。
ああいう、見ている人が分かるような丁寧な解説なんかをしてあげることでファンベースを増やしていくって言うのはすごく大事かなと思いますね。
今どういう状況で、どうすれば有利になって、だから選手はこう考えているっていう部分を知ることで楽しめるのに、そういった所を解説してくれるメディアがないから、ファンが育たないし、増えないっていう状況にeスポーツは陥りそうなので、そういった「ファンを育てる」試みっていうのが大事なのかなと思いますね。
最後に:ユーザーへのメッセージ
筆者
ありがとうございます。それでは最後に今EpicGamesが特に力を入れていることやユーザーへのメッセージをお聞かせ願えますか?
河崎氏
はい。エンジンに関してだと、我が社の重要な柱はやっぱりゲームに関することなので引き続き開発を進めていくんですけど、ノンゲーム分野、自動車だったり建築だったりで使っていただけるようにっていうのにも力を入れていますね。
あとは映像分野ですかね。CGを使う映画などでUE4を使っていただくっていうのもやっています。例えば「ローグワン/スター・ウォーズ・ストーリー」なんかだとUE4で作ったCGが最後まで残っていたりしますね。
リアルタイムでハイクオリティな絵がレンダリングできるっていう強みがあるので映像分野では使っていただけています。
そういったノンゲーム分野でUE4を使っていただくって言うのは今特に力を入れている所ですね。
フォートナイトに関してはもちろん、今世界で非常にたくさんの方に遊んでいただけているの引き続き力は入れていきます。
今もほぼ毎週なんらかのアップデートはかけていて終わりのない開発が進んでいる状況なので、開発している本社はもちろん我々(Japan)のメンバーも引き続き頑張っていきます。
筆者
本日はありがとうございました。私も一フォートナイトファンとして楽しみにさせていただきます!
◀︎インタビュー前半:ゲーム業界を夢見る人必見!EpicGamesJapan代表・河崎高之氏に聞くアンリアルエンジンのこと