東京ゲームショウ2018のe-Sportsフォーラムへ直接取材した内容まとめ!
日本e-Sports連合の会長 岡村秀樹氏を始め多数の著名人が登壇
東京ゲームショウ2018(TGS2018)の初日となる2018年9月20日、会場内のホール1にて「eスポーツがスポーツとして広がるまでのロードマップ」と題したeスポーツの基調講演が行われた。
当公演では世界的に一大ムーブメントを引き起こし、日本でも急速に知名度を伸ばしているeスポーツの現状や今後の課題など、様々な内容の公演を5名の登壇者とモデレーターによるパネルディスカッション形式で行った。
今回のTGS2018のe-Sportsフォーラムに参加した登壇者は以下のメンバーとなっている。
- 日本eスポーツ連合 会長:岡村秀樹 氏
- カプコン 常務執行役員 e-Sports統括本部長:荒木重則 氏
- コナミデジタルエンタテインメント「ウイニングイレブン」シリーズ 制作部長 森田直樹 氏
- Asian Electronic Sports Federation(AESF) 会長 ケネス・フォック 氏
- 日本サッカー協会 副会長 岩上和道 氏
【モデレーター】
- 日経クロステック副編集長 玉置亮太 氏
いずれも日本の今後のeスポーツの興隆を担っている方々が登壇しており、皆一様に今後のeスポーツへの熱意は高かった。
また上記の登壇者とは別に、まず始めににコンピュータエンターテインメント協会(CESA)会長の早川英樹氏によるセミナーも行われた。
以下ではとにかく様々な情報が飛び交ったe-Sportsフォーラムの内容を説明していく。
今や日本人の85%がゲーム経験者と早川会長が語る
登壇者によるパネルディスカッションを行う前に、最初に主催者であるコンピュータエンターテインメント協会(CESA)の会長、 早川英樹氏が登壇した。
まず早川会長は日本にゲームが登場して40年を迎えたことで今はゲームをプレイしていない休眠プレイヤーを含めれば、実に日本人の85%がゲームを経験している事を語った。
ちなみに3歳から70歳までの、今もある程度ゲームをプレイしているユーザーは日本人全体の40%であるというデータが出ており、その数は実に4500万人にも上るとの事だった。
また、世界的に見ればゲームの市場規模が数十兆円まで増加しており、国内だけで見ても直近では1.8兆円にもなっていると早川会長は語った。
これは早川氏が言っていた、「ゲーム産業は成長し続ける拡大市場であると同時に、歴史のある成熟市場である」という言葉の通り、時代が進めば進むほどPCゲームやソーシャルゲーム、そしてeスポーツといった様々な媒体のゲームがユーザーの身近に増えていったことが要因だろう。
また、早川会長はeスポーツについては「日本におけるeスポーツの認知度は高まっているが、日本のゲームの人口を考えればまだまだ伸びる」と語った。
実際、世界ではeスポーツの視聴者は3600万人おり、日本の382万人という数字は4500万人ものゲームプレイヤーがいる事を考えればまだまだ少ない。
eスポーツに対する認知度も、一年で14.4%→41.1%と大きく伸びてはいるが、同じスポーツ競技であるサッカーや野球と比べると低いのが現実だ。
先日の一件(参考記事)からやや雲行きが怪しくなったオリンピック競技への追加を目標とするのであれば、その辺りは今後のeスポーツにおける一つの課題となるだろう。
『e-Sportsはオリンピックに不要!?IOC会長が「Killer Games」は不採用と発言』
早川会長も語っていたがゲームとスポーツの親和性は高く、今後は競技性と選手・メディア・サポーターの三すくみをより強化していくことでより認知度やファン数の増加を狙っていくことができるだろう。
最後に早川会長はTGS2018に対して「ここがeスポーツの魅力を感じ、理解を深められる場になってほしい。またeスポーツには選手やそのサポーターとの絆があるだけでなく、チーム同士の戦いや個人同士の戦いもあり、相手の選出の健闘を称え合う精神もあるため、スポーツとなんら変わりはない」とした。
今後は選手の活躍の場を作っていきたい
続いて今回のサミットの本題でもある、「eスポーツが“スポーツ”として広がるためのロードマップ」が行われた。まず登壇したのは日本eスポーツ連合(JeSU)の会長である岡村秀樹氏で、8発にジャカルタで行われた第18回アジア競技大会で初めて行われたeスポーツ大会で、JeSUから派遣された日本人選手が金メダルを獲得したことを紹介した。
その後、岡村会長は「今年はeスポーツにとってエポックメイキングな年である」と語ると共に、日本のeスポーツ市場は世界と比べるとかなり遅れているものの、まだまだ伸びしろがある事を述べていった。
実際、JeSUはまだ今年の1月に設立されたばかりの団体であるにも関わらず、「e-Sports-Xの主催」「茨城国体2919にeスポーツ選手権の獲得」「日本とサウジアラビアのeスポーツマッチの開催決定」、そして「第18回アジア競技大会への代表選手の派遣、金メダルの獲得」といった数多くの実績を上げているので、今後の展望にはかなりの期待ができる。
最後に岡村会長は「今後はeスポーツの選手が活躍できる場所や、そのための場を整えること」を目標に活動をしてきたいとしていた。
先日、プロeスポーツ団体の「DetonatioN Gaming」と「福助株式会社」がスポンサードを締結(参考記事)して、選手の負担を減らすグッズを作成することを視野に入れるなど段々と環境が整ってきてはいるものの、まだまだ海外に比べると活躍の場やサポートの体制が甘いのは事実だ。
『プロe-Sportsチームの「DetonatioN Gaming」が福助とのスポンサー契約を締結!』
今後は短期間で数々の実績を作ってきたJeSUを通して、プロ選手を取り巻く環境が向上していくことを願いたい。
未来の優秀なプレイヤーを増やしたい
続いて登壇したのは、「カプコン」の常務執行役員 e-Sports統括本部長である荒木重則氏だった。まず荒木氏は、カプコンがこれまで30年以上のもの間、eスポーツに関して取り組んできたと語った。
その例として上げたのが、今なお高い人気をほこりeスポーツ大会も数多く開催されている格闘ゲーム「ストリートファイター」だった。
ストリートファイターはその長い歴史により、世界中で数多くの大会を開催している実績がある。また、それに伴いファンも世界中に存在している格闘ゲームだ。
実際、先日行われた日本大会にはロシア人の夫婦がわざわざ参加しに来ているなど、流石は歴史あるストリートファイターといった成果は多い。
また、カプコンはストリートファイターの大会を首都圏だけでなく、キャラバンを活用することで日本全国で開催している。
これはストリートファイター、ひいてはeスポーツへの参加人口を増やすのと共に、将来のeスポーツ業界を盛り上げてくれる優秀なプレイヤーの発掘を目的としているようだ。
この時には先日行われた九州大会の映像も流されていたのだが、親から将来プロゲーマーになるべく英才教育を受けている子供や、現役にプロゲーマーに褒められて嬉しそうにしている少女の姿が映っており、その目論見が成功していることを物語っていた。
このことからも今後のストリートファイター、ひいてはカプコンのeスポーツの展望に期待が持てそうだ。
選手ファーストが大事
続いてコナミデジタルエンタテインメントの「ウイニングイレブン」シリーズ制作部長である森田直樹氏が登壇した。森田氏はコナミはeスポーツのジャンルの中でもトップレベルの規模をほこるサッカーゲーム「ウイニングイレブン」を始め、カードゲームとして「遊戯王」、野球ゲームとして「パワプロ」などをメインに取り組んでいることを語った。
また、アジア競技大会にはウイニングイレブンが選ばれ、先ほども語ったように日本代表選手が金メダルを獲得したことも述べていた。
今後はウイニングイレブンをよりeスポーツのタイトルとして質の向上を目標にし、実際にサッカーの戦術を知っている人間がいると強いといったレベルまでゲーム性を高めていくことを目標にするようだ。
そして、そのためには選手のことを第一に考えた、「選手ファースト」が最も重要であるという考えを示していた。
今後はテレビ放送も視野に
続いて登壇したAsian Electronic Sports Federation(AESF)の会長であるケネス・フォック氏は、eスポーツはその規模が拡大してきたからこそ、オンラインだけでなく今後はテレビ放送やステージイベントいった、オフラインのイベントを取り組んでいくべきだと語った。
また、フォック氏は日本でeスポーツの認知度が大きく上がったのは進歩であり、その橋渡しが出来たことを喜んでいた。
今後はeスポーツの金メダルの取得に対する価値を高めていくことで、eスポーツそのものに対する社会への付加価値を付与していきたいとの事だ。
フォック氏はeスポーツは単なるゲームではなく競技であると語っており、その認識を高めていけば今後はオリンピック競技になると、eスポーツの将来に対して高い期待を示していた。
性別や年齢、障害が関係ないeスポーツはサッカーの将来にも貢献
最後に登壇した日本サッカー協会副会長である岩上和道氏は、eスポーツのサッカー競技とサッカーの本性が合致していると語った。
サッカー協会では男子、女子サッカー以外にもシニア向けのサッカーやジュニアリーグ、フットサルや障害者のある方向けのサッカーなど、様々な競技を行っている。
しかし、eスポーツ競技のサッカーであればサッカーの本性と呼ばれている「包括的」「健全 非暴力」「世界的」である3つの要素を全て満たしているだけでなく、性別や年齢、障害の有無に限らず全ての選手が平等に競い合える、と非常に高く評価をしていた。
実際、筆者もeスポーツは競技性が高くとても楽しめるという点以外にも、性別や年齢、障害の有無や言語の違いという枠があっても平等に楽しみ競い合える競技だと思っているので、この考え方には非常に深い感銘を受けた。
また、最後に岩上氏は2019年に茨城で行われる国体と合わせて、「全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKI」を開催することを決定した。当選手権にはコナミも協力し、『ウイニングイレブン2019』を用いたeスポーツの団体戦を行うようだ。
さらに将来的には「ゲームを通じて、今までサッカーに興味の無かった層がサッカーを好きになり、サッカーファミリーの拡大。また、日本サッカー協会としてeスポーツの日本代表を作っていきたい」と、将来の展望を語っていた。
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